未解決事件ファイル
| 群馬県高崎市男児誘拐殺人事件（1987年9月） |
1987年9月14日午後4時50分ごろ、群馬県高崎市築縄町の高崎中央消防署員の長男である幼稚園児の荻原功明（おぎわら・よしあき）くん（当時5歳）が「近くの神社に遊びに行く」と言って出かけたまま行方不明になった。
同日の午後6時40分、功明くんの家に男の声で「子供を預かっている。2,000万円よこさなければ子供は殺す」と身代金要求の電話があったため、両親は直ちに警察に110番通報。捜査班は荻原さん宅で逆探知の準備を整え、次の身代金要求に備えた。
午後7時47分にかかってきた2回目の脅迫電話は、1回目同様2,000万円の身代金を要求する内容だった。午後8時3分には3回目の電話。この時は功明くん自ら電話に出て、父親の問いかけに「元気。これから帰るよ。おまわりさんと一緒」と言った。2回目と3回目の脅迫電話は、いずれも通話時間が短かったために逆探知ができなかった。
2日後の9月16日午前7時50分、4回目の脅迫電話があった。男の声で「今日夕方6時までに1,000万円用意しろ」と身代金の額を下げて要求してきた。通話時間は27秒で逆探知はある程度可能な時間であったが、捜査班は逆探知体制を前日の15日に解除しており、犯人の居場所は特定できなかった。（当時の逆探知には回線制限が必要であり、長期間の逆探知シフトは出来なかった）
午後12時35分、功明くんの遺体が家から数キロ離れた高崎市鼻高町の入の谷津橋下の寺沢川で発見された。司法解剖の結果、死因は砂や水を飲み込んだことによる窒息死であった。顎を骨折しており、胃の中はからっぽで食事を与えられた形跡はなかった。
首を絞められた跡や薬物を飲まされた形跡はなかったが、腹には殴った跡があった。このことから、功明くんを気絶させてから生きたまま橋の上から投げ落としたものと推定された。死亡推定時刻は9月15日午前10時以前と見られ、4回目の脅迫電話は殺害してから身代金を要求する電話をかけていたことになる。
捜査班は、電話の声から犯人は中年の男と推定、身代金の額の変更などが場当たり的であること、身代金の受け渡し場所や具体的な方法を指定しなかったこと、翌日が敬老の日で金融機関が休みであることなどを考慮せず身代金を要求していることなどから、金銭目的ではなく荻原家に対する怨恨や、計画性が薄く社会性のない異常性格者による犯行として捜査にあたった。
また、功明くんが「おまわりさんと一緒」と言ったことから当日に非番だった警察官も対象に捜査を行った。しかし、懸命の捜査にもかかわらず犯人の行方は掴めなかった。かろうじて逆探知で特定できたのは群馬県高崎市北西部地域で、該当回線は1万本以上ということだけだった。
県警特捜本部は15年間で捜査員約26万4千人を投入。聞き込みは2万2000世帯に上り、捜査対象は不審者など約4200人、車両も約4万2千台に及んだが、犯人の特定には至らず2002年9月14日に公訴時効が成立した。
なお、この事件の翌日には群馬県尾島町（現・太田市）で小学校2年の女児が誘拐、殺害される事件が発生しているが、同様に時効となっている。
