未解決事件ファイル
| 福島県田村郡小2女児失踪事件（1991年7月） |
1991年7月24日深夜から翌朝にかけて、福島県田村郡船引町（現・田村市）に住む建設業経営・石井賢一さん方で、娘の舞さん（7歳）が就寝中に行方不明になった。
石井さん宅は大家族で、1つ屋根の下に9人が住んでいた。家族構成は次の通り。
・父親：賢一さん（当時37歳）
・母親：ヨシ子さん（当時27歳）
・長女：舞さん（7歳）
・長男：賢人くん（当時6歳）
・次男：礼央くん（当時1歳）
・祖父：直之さん（当時74歳）
・祖母：ハル子さん（当時66歳）
・姪：賢一さんの姪（当時17歳）
・姪の彼氏（賢一さんの会社の従業員）：玉川和弥さん（当時22歳）
事件当日の7月24日には、上記家族に加えて母親の友人の娘2人（当時小学2年生と4年生）が泊まりに来ていた。ただし父親の姪は事件当日の昼過ぎに実家に帰っており、石井さん宅にはいなかった。石井さん宅は複雑な造りになっていて、1階と2階それぞれに玄関があり、2階は事務所につながっていた。
7月24日21時30分ごろ、舞さんは泊まりに来ていた2人と一緒に、2階にある両親の寝室の隣の部屋のセミダブルベッドで、3人で川の字になって寝ていたという。この時、舞さんは川の字の真ん中で寝ていた。
その約1時間後の22時30分ごろ、母親のヨシ子さんは舞さんたちが寝ている寝室に行き、勉強机の蛍光灯を消して、3人にタオルケットをかけ直している。このことから、22時30分ごろまでは、舞さんは自宅にいたことが分かっている。
その後、母親のヨシ子さんも隣の部屋で就寝。翌日25日の早朝5時20分ごろ、舞さんと一緒に寝ていた女の子2人が起き、舞さんがいないことに気づいたため既に起きていた父親の賢一さんに舞さんがいないことを告げた。家族で舞さんの行方を捜したが見つからないため、6時になって警察に通報した。
警察は大規模な捜索を行い、舞さんの学校関係者・PTAも舞さんの行方を捜した。捜索場所は自宅・近隣の建物・山林・池や沼、河川・マンホール・工事現場・トイレ・防火用水など6370ヶ所にも及んだが、舞さん発見の手掛かりを得ることができなかった。
父親の賢一さんは、24日は20時50分ごろに舞さんの弟2人と一緒に就寝。いつも晩酌後すぐに就寝する習慣で、起床が早い朝型の生活を送っていたという。翌25日は4時20分に起床し、寝室・居間がある2階から玄関を通じてすぐに行くことができる事務所に向かっている。この時、施錠していたはずの2階の玄関が少し開いていたことを発見している。その後、居間に戻った時に舞さんがいないことを女の子2人に告げられた。
母親のヨシ子さんは、24日の22時30分ごろに2階の玄関の鍵をかけてから上記の通り舞さんたちの寝室に入り、蛍光灯を消し、タオルケットをかけ直している。これが舞さんを確認した最後となった。その後、1階で玄関のドアが「バタン」と閉まる音がしたことに気づき、2階の窓から外を見ると、父親の賢一さんの姪の彼氏である玉川さんが外に出ていくのが見えたという。
その後ヨシ子さんは1階にある浴室へ行き入浴。この際、1階の玄関のドアが開く音と階段を誰かが上がっていく音を聞いている。ヨシ子さんは祖父母かと思い、それほど気にしなった。入浴後2階に上がり、23時10分ごろ賢一さんと同じ寝室に行き就寝。しかし、1時間ほど寝付けなかったという。
舞さんと一緒に寝た女の子2人は、翌朝5時20分まで舞さんがいないことに気づかなかった。ただ女の子2人のうち1人は、夜中にうっすらと舞さんの名前を呼ぶ声を聞いたと証言している。この時の声は優しい声だったという。性別は不明。
祖父母は、21時20分ごろに2人でタクシーでカラオケスナックへ外出。2人はよくカラオケへ行くことがあったという。この時、祖父母は1階の玄関を使用、外出時には施錠した。
帰宅したのは深夜2時ごろで、その際には1階の玄関の鍵が開いていた。この時、玉川さんが不在だったことから、祖母は心配になってそのことを賢一さんに伝えたところ、賢一さんに「明日、（玉川さんに）聞くから心配するな」と言われたため、祖母は1階の玄関を施錠して就寝した。
賢一さんの姪は事件当日は昼過ぎから実家に帰っていたため、事件当時は石井さん宅を不在にしていた。24日は交際している玉川さんと旅行に行く計画だったが、玉川さんに急な仕事が入ってしまったために旅行は中止。そのために1人で実家に帰ったのではないかとされている。
玉川さんは24日の22時過ぎ、友人と遊びに行くために外出。着替えのために一度戻るが、22時30分ごろに再び家を出た。この時、1階の玄関の鍵はかけていない。その後、自宅の南側にある公衆電話で友人と電話しているのを母親のヨシ子さんが目撃している。
玉川さんは友人と会うため郡山まで自分の車で出かけようとしたが、車のバッテリーがあがっていたために、エンジンがかからなかった。しばらくしてもう一度車のエンジンをかけようしたがかからず、郡山への終電は既に出ていたため、23時ごろにタクシーで郡山に向かった。しかし郡山の友人は現れず、デパート前のベンチで一晩を過ごしたという。そして翌朝の5時48分郡山発の始発電車に乗り、6時30分に自宅に戻っている。
警察が調べる中で、家族の中で舞さんの失踪と同じ時間帯に外出していた玉川さんに疑惑が浮上。玉川さんは25日に警察に事情を聞かれ、その後2週間拘留されている。しかし取り調べの中で事件当日に玉川さんを郡山まで乗せたというタクシー運転手が見つかった。また、郡山のデパート前のベンチでも、玉川さんと言葉を交わしたという客引きがの証言が得られたことからアリバイが実証され、容疑者から外された。ただ、会いに行った友達に話を聞いたところ、玉川さんと会う約束はしていなかったという。
その後、泊まりに来ていた女の子2人の証言で、夕食前に玉川さんと一緒にゲームをしていた時、玉川さんは舞ちゃんに「夜の12時に一緒に遊びに行こう」と約束していたことが分かった。しかし子供の証言だったこともあり、両親が無理に証言させたと判断されて、警察ではきちんとした証言として扱われることはなかった。
玉川さんは事件当時、父親の賢一さんの姪（17才）と交際していた。警察の2週間の取り調べから解放された後、姪と一緒にホテルに行った際、姪に「いま探しているところに舞ちゃんなんかいない」と発言している。また、失踪者を探すテレビ番組に出演した際には、「時が来たらお話します」と意味深な発言をしていることから、舞さん失踪に関する何らかの情報を知っている可能性がある。
玉川さんは賢一さんが経営する建設会社の従業員。シンナーを常習的に使用しており、賢一さんが厳しく注意する場面もあったという。また、24日に姪と旅行に行く予定だったが、賢一さんから仕事を割り振られたために旅行がキャンセルとなっている。このようなことから賢一さんと玉川さんの関係は決して良くなかったことが分かる。
その後の警察の調べでは、24日の23時ごろ、石井さん宅前に白い不審車両が停まっていたのを近所の住民が目撃している。この不審車両はエンジンがかけられたままでボンネットが開いていたが、運転手の姿はなかった。この時間帯は玉川さんが自宅周辺にいた時間と一致するが、玉川さんから不審車両の目撃証言はなかった。
警察による自宅内の捜索では、家族以外の指紋や足跡などは検出されなかった。また、警察犬を使って舞さんの行方を追ったところ、警察犬は1階の玄関先でピタっと止まったという。このことから、舞さんは身内に限りなく近い人物に、1階の玄関先で車などで連れ去られた可能性が高いとみている。
結局犯人逮捕につながる有力な手掛かりはなく、事件発生から15年後の2006年7月24日、公訴時効を迎えた。
