小樽資産家女性殺害事件（2011年7月）

2011年7月5日、北海道小樽市富岡1丁目のマンションに住む木本澄子さん（当時81歳）の親族が、木本さんと数日間連絡が取れないことを不審に思い、北海道警察小樽署の警察官を伴って10階建てマンション3階の1室にある木本さんの自宅を訪れたところ、木本さんが血を流して倒れて死亡しているのが発見された。

その後の調べで、木本さんは首や胸など数10カ所を刃物で刺されており、死後数日が経過していたことが判明。7月1日〜2日の間に殺害されたと見られ、北海道警察は殺人事件と断定して捜査を開始した。

室内は荒らされておらず、現金数万円の入った木本さんの財布がそのまま残され、部屋の玄関も施錠されていた事から警察は犯人は顔見知りの可能性が高いと見て捜査を進めた。マンションには防犯カメラなどは設置されておらず、目撃証言もほとんどなく捜査は難航した。

木本さんは、小樽市内でアパート経営などをする傍らで、無許可の貸金業を営んでおり、主婦や個人事業主などを相手に高利で10万〜100万円以上の金を貸していたという。その取り立てはかなり強引だったとも噂され、複数の人間と金銭トラブルを抱えていたことが判明した。

事件発生から約2ヶ月半後の2011年9月17日、北海道警察は小樽市内で不動産会社「有限会社ヒロホーム」を経営する広岡久子さん（当時62歳）を殺人の容疑で逮捕した。

木本さんは自身の保有するマンションの売却の仲介を広岡さんに依頼していたが、買い手がつかなかったため、広岡さんに3000万円で購入するよう持ちかけ、広岡さんはそれを承諾した。しかし資金が不足していたため、半額の1500万円を木本さんから借金していた。

広岡さんは木本さんへの借金の返済や会社の資金繰りに苦しんでいたとされ、携帯電話の通話記録や借金返済期限の延長を求めるメモ、7月1日に広岡さんが木本さんに借金を返しに行く約束をしていたとする知人の証言などが証拠として提出された。一方で広岡さんは殺人容疑を否認、黙秘を貫いた。

北海道県警は広岡さんの自宅などを家宅捜索し、衣類など1292点もの物品を押収したが、その中からは凶器や血液反応などの犯行を裏付ける証拠は見つからなかったという。また、広岡さんの車や娘の車も証拠品として押収されたが、搭載されていたナビにも、木本さん宅に長時間停車していた記録などは残されておらず、犯行に使われた事を示す証拠は見つからなかった。

逮捕の翌月10月7日、容疑者とされたは広岡さんは証拠不十分として釈放された。殺人事件の容疑者が責任能力の有無に関係なく釈放されるというのは異例の事態で、一部メディアが事実上の誤認逮捕、冤罪事件として北海道県警の捜査を批判した。

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