横山ゆかりちゃん誘拐事件(1996年7月）

1996年（平成8年）7月7日、群馬県太田市のパチンコ店「パチトピア」で、市内に住む保育園児・横山ゆかりちゃん（当時4歳）が何者かによって連れ去られた。

この日は日曜日だったため、ゆかりちゃんの両親は2人の娘を連れて、自宅から車で数分のところにあるパチンコ店を訪れた。午前10時のオープン前に到着し、少し並んでから入店した。両親は何度か行ったことがあったが、ゆかりちゃんがこのパチンコ店を訪れるのは初めてだったという。

両親は別の通路にある台でそれぞれ打ち始めた。ゆかりちゃんは両親がパチンコをしている間、通路や景品カウンター付近を走り回って遊んでいた。当時0歳の次女を背負ってパチンコをしていた母親は、時々ゆかりちゃんの様子を見に行き、店の外には出ないように伝えていたという。ゆかりちゃんに景品の花火が欲しいと言われた父親は、景品を手に入れるためパチンコに集中していた。

お昼ごろになり、昼食を食べるために母親はゆかりちゃんを連れて駐車場に戻った。おにぎりを食べさせたが、少し食べると「もういらない」と言って残したという。昼食後再び店内に戻ったが、お腹が空いたゆかりちゃんは母親におにぎりをねだりに来たため、母親はおにぎりとパックのジュースを持たせて、店内のベンチに座って食べるように伝えた。

午後1時30分ごろ、ゆかりちゃんが母親に「◯◯のおじちゃんがいるよ」と言いに来たため、母親はついていかないように伝えたという。これがゆかりちゃんが確認できた最後となる。午後1時40分ごろ、母親がゆかりちゃんの姿を確認しに行った時にはゆかりちゃんの姿は消えていた。ベンチには、おにぎりとジュースが残されていた。

パチンコ店の防犯カメラの映像には、ゆかりちゃんのそばに映る不審な人物が記録されていた。走り回るゆかりちゃんの後を追うように、うろうろと歩き回り、両親から少し離れた場所にあるベンチに腰掛けたゆかりちゃんの隣に男も並んで座り、店の外を指差しながら何事かをゆかりちゃんに話しかけていた。その直後、ゆかりちゃんと男はカメラから姿を消した。

ゆかりちゃんはこの男の存在を知らせるために一度母親のところへ戻ったとみられるが、店内の騒音のため母親には「○○のおじちゃん」という言葉しか聞き取れなかったという。

身代金要求の電話がかかってくる可能性も考え、両親は群馬県警の捜査員とともに自宅で逆探知の準備をして電話がかかってくるのを待っていたが、かかってきたのは嫌がらせやいたずら電話ばかりだった。

この事件は、1990年（平成2年）5月に発生した栃木県足利市のパチンコ店駐車場から女児が行方不明になり、翌朝河川敷で遺体となって発見された事件（足利事件）他2件の女児誘拐事件との関連性も噂されている。いずれも同様の手口で誘拐されていることから同一犯による犯行ではないかとの見方もあるが、真偽の程は定かではない。

事件から25年が迫った2021年7月1日、太田警察署は新しいチラシ・ポスターとともに、最新技術により新たに解析を加えた重要参考人の画像を公開した。これまで公開されてきた防犯カメラの画像に対して重ね合わせやノイズの軽減、コントラストの調整等を加えたもの。最新の画像解析技術により、男が丸形の腕時計をしていること、ポーチの様なものを身に着けていることが判明した。

本事件は警視庁の捜査特別報奨金の対象事件に指定されている。犯人検挙につながる有力な情報を提供した人に、上限で600万円の懸賞金が支払われる。（捜査特別報奨金上限額300万円、太田遊技業防犯協会からの私的謝礼金上限額300万円）警察では現在も毎月7日に太田市内のショッピングモールなどで、情報提供を呼びかけるチラシやポケットティッシュを配布している。現場は、群馬県の南東部に位置する太田市高林東町の旧国道354号線沿いにあるパチンコ店。

【ゆかりちゃんの特徴】
・身長100センチ、体重20キロ
・髪は肩まで伸ばし、頭の上をピンク色のリボンで結んでいた
・おでこが広く、耳が大きい。お腹の左側に楕円形のあざがある
・ピンク色のワンピースの上に白色レースの半袖カーディガン
・ワンピースの胸に「cutydoll（ハートマーク）」の赤文字刺繍
・靴はサイズ17センチの白色のビニール製運動靴で、マジックテープで止めるタイプのもの。かかとの内側がピンク色で、靴の内側のくるぶし下に「ゆかり」と記名されている

【犯人の特徴】
・年齢30〜50歳くらい（当時）
・身長158cmくらい
・黒い野球帽、サングラス、丸型腕時計、ポーチ様のものを着用
・背中にハの字模様の入った黒っぽいジャンパー着用
・襟のない白色シャツ、ニッカボッカ風の黒色ズボン、サンダル様の履物着用
・がに股歩き

＜群馬県警ホームページ＞ゆかりちゃん誘拐事件

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