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未解決事件ファイル

葛飾区柴又上智大生殺人事件(1996年9月)

1996年(平成8年)9月9日午後4時39分、東京都葛飾区金町4丁目の金町消防署に「家が燃えている」との119番通報が入った。火事になったのは、葛飾区柴又3丁目の会社員・小林賢二さん宅。通報したのは小林さん宅の隣の住人だった。火は約2時間後に消し止められ、消防隊員が木造2階モルタル造りの2階を調べたところ、両親の寝室で倒れている次女の順子さん(当時21歳)を発見、病院に搬送したが死亡が確認された。順子さんの死因は火災によるものではなく失血死と判明した。

発見時、順子さんは父親の布団の上で横向きに寝かされ、夏用の掛け布団を頭からかぶせられており、布団の左右の端は体の下に挟み込まれていた。口と両手、両足をガムテープ、太ももをストッキングで縛られていた。

鋭利な刃物で数回にわたって刺されたとみられる傷があり、遺体の首には幅6cm、深さ4cmに及ぶ傷など計5ヶ所、顔には1ヶ所の刺し傷が残されていた。傷の状態から、犯人は果物ナイフやペティナイフのような小型の刃物を使用したと考えられる。推定される刃物の大きさは、刃渡り8センチメートル以上、刃幅約3センチメートル。

順子さんの両手には複数の傷があり、犯人に襲われた際、激しく抵抗したものとみられる。犯人は犯行当時何らかのケガを負い出血しており、DNA型からA型の男であることが分かった。男は順子さん殺害後、1階に降りてきて返り血を浴びた衣服を着替え、手袋をはずして手を洗った後、証拠隠滅を図るために1階東側にある6畳和室の押入れに火を放ったと思われる。1階で発見されたマッチ箱に付着したDNA型を調べたところ、男のDNA型と一致した。順子さんの遺体は布団がかかったいたため、消失を免れていた。

マッチは仏壇にあったもので、男はこれを使って押入れに火をつけたものとみられる。同じく1階にあるパソコンにも火がつけられた痕迹があった。また、父親が普段使用しているスリッパが揃えて2階に置いてあったことから、順子さんが顔見知りの人間を家に招き入れた可能性もある。

事件当日、順子さん以外の家族は全員外出していた。父親は福島県へ出張、姉は仕事に出かけていたという。母親は午後3時50分ごろ仕事のために家を出ており、この時玄関に鍵をかけなかったという。

母親が家を出る直前に、順子さんはトイレに行くため2階にある自分の部屋から1階に降りてきた。仕事に出かける準備をしている母親へ「こんなに雨が降っていても自転車で出かけるの?」と声を掛けたといい、これが最後の会話となった。当日は朝から雨が降っていたため肌寒く、午後にはさらに激しく降っていた。

警察による現場検証では、預金通帳や現金など貴重品は残されたままで、順子さんのカバンの中に入っていた14万円もそのままの状態だった。一方で、1階居間にある戸棚の引き出しに物色された跡があり、父親が1枚だけ保管していた旧1万円札(1986年まで発行された聖徳太子の肖像入りの紙幣)だけがなくなっていた。

順子さんの着衣に乱れはなく、暴行された形跡もみられなかった。現場にはガムテープとマッチ箱以外に、指紋や凶器などの遺留品は残されていない。順子さんの両足を縛ってあったストッキングは「からげ結び」という造園や着付け等に用いる特殊な方法で結ばれていた。

ガムテープは静岡県下の工場で1994年(平成6年)1月以降に製造されたもので、布粘着テープと呼ばれるもの。1巻が幅50ミリメートル、長さ25メートル、価格は700円から800円、一般の製品より高価で主に梱包用途で販売されていた。全国に広く流通しており、梱包業者等法人に直接納入されるほか、ホームセンター・文具店等でも購入することができた。

順子さんは当時上智大学英語学科の4年生で、2日後にシアトル大学への留学を控えていた。そのため、留学を妬んでの犯行とも想定されたが、現在も犯人は特定されていない。事件発生約10日前の1996年8月末の午前0時ごろ、順子さんは送別会からの帰宅途中で男に後をつけられたため駅まで戻ったというが、この件と事件との関連性も不明である。

事件から8年が経過した2004年9月9日、亀有署捜査本部は事件直前に現場で目撃された不審な男の似顔絵を公開した。目撃情報は2件あり、1件は午後3時30分ごろ、現場南側の交差点で黒色の傘をさして立つ男を自転車で通りすがりに見たというもの。もう1件は午後3時55分ごろ、傘をささずに現場の玄関前で立ち、表札や2階部分周辺をじっと見つめていた男の姿を通りすがりに見たというものだった。

時間や場所、着衣の状況などから、警察は2件の目撃情報はいずれも同一人物の可能性が高いと考えている。男は身長150から160センチメートルくらいの中肉またはやせ型で、えり付きフードなしの黄土色っぽいコートに黒っぽい色のスウェットのようなズボンを着用していたとみられる。コートは男の身長や体格に合わないサイズの大きなものだったという。

事件発生から14年となる2010年9月9月、捜査本部は新たな情報を公開。順子さんの手足などに巻かれたガムテープの粘着面に植物片、木片、犬の毛等が付着していたことが発表された。このことから、犯人の男が当時犬を飼っていた可能性もあるとみている。犬の毛は数種類付着しており、愛犬家の可能性もある。なお、小林さん宅でこれまでに犬を飼ったことはないという。

この事件は公的懸賞金制度の対象事件。有力な情報を提供した人に捜査特別報奨金として上限額300万円、順子さん殺人事件の捜査に協力する会による謝礼金が上限額500万円、計800万円が支払われる。

現場はJR金町駅の南約1300メートル、京成電鉄金町線柴又駅の北西約250メートル、京成電鉄成田線京成高砂駅の北東約1000メートルに位置する2階建ての一般住宅。周辺は柴又駅を中心として、駅東側に柴又街道が南北に走行し、北方に進むと国道6号線(水戸街道)、南方に進むと京葉道路にそれぞれ通じている。柴又帝釈天・矢切の渡し等がある観光地として賑わう一方、現場のある駅西側は当時からほぼ変わらない閑静な住宅街が広がっている。

<警視庁ホームページ>柴又三丁目女子大生殺人放火事件



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